ドラッカーによる顧客の創造と顧客満足

顧客の創造 企業の目的として有効な定義は一つしかない。顧客の創造である。『現代の経営』 事業とは、市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセスである。事業の目的は顧客の創造である。『創造する経営者』 「顧客の創造」はドラッカーの中心的な概念ですよね。この解釈は新規顧客を開拓すること、既存顧客に満足していただきリピートしてもらうことなど、様々にとらえることができます。 企業活動は、顧客の欲求がベースです。既に欲求が感じられているところへ行き、その欲求を満足させるための手段を提供します。企業活動を通じてその顕在的、存在的な欲求を有効需要に変えていきます。つまり、市場を作るのです。これが「顧客の創造」です。 マーケティングは「誰が」「どんな問題に」困っているかを考えることからスタートします。そのための1つの方法は世の中の環境変化に着目することです。顧客の悩みが「健康維持」であれば、「なぜそのように考えるに至ったのか?」その背景を分析します。夜遅くの暴飲暴食を続けてきた、コンビニ弁当や外食ばかりである、まったく運動をしなくなった、はたまた、近年の日本人の食生活の変化や医師不足による保険制度の改正、いびつな人口構造にその理由があるかもしれません。このような環境変化が生じると、その変化の中で「困っている人」がでてきます。 環境の変化を分析することによって、「変化によって困っている人が一時的なのか?」「継続的なのか?」「規模はどの程度なのか?」を分析できます。これは、マーケティングを行う上で重要な市場の成長性や規模の分析につながります。もし、そのような悩みを発見し、「自社の強み」で解決することができれば、その企業は顧客を創造する可能性が高くなります。強みを活用することで、模倣企業に対しても参入障壁を高くすることができます。 顧客満足 組織にとって、成果は内部にない。会社の成果は顧客の満足である。『21世紀の挑戦』 顧客満足は、購買前の期待と購買後の評価によって決まります。「顧客満足を提供する」ということは、顧客の期待に応えるだけではなく、顧客の期待を上回る必要があるのです。ここが非常に重要で、常に意識しておかなければならないところです。顧客の求めているハードルを越えたものを提供し続ける企業が残っていくと思います。 一般に満足を得た顧客は、再びその商品を繰り返し購買します。いわゆるリピーターです。また、満足度の高い顧客は、その商品や企業のロイヤルカスタマーとなり、積極的に商品の宣伝をしてくれます。時には、その商品の改善や次の商品開発に繋がる積極的なコメントを企業に出してくれるようになります。これらの行動はプラスの口コミとなり、さらに別の新規顧客を創出する結果となり、企業にとってはプラスの循環を生みます。 一方、不満を得た顧客はどうでしょう?一番多いのは、サイレントです。黙ったまま、二度とその商品やサービスを利用しません。顧客によっては、不満を持ちながらも購買する方もいます。いずれにせよ、企業からするとこのサイレントという行動は非常に権威です。黙っているので顧客が不満を持っていることを企業は知る術がないからです。したがって、企業は顧客の満足にばかり注目するのではなく、むしろ顧客の不満足にフォーカスを当てる必要があります。 不満足の行動で直接的に被害を拡大する行動は他社に対してのネガティブな口コミです。企業や第三社機関に苦情の申し立てをする顧客は少なく、自分が属しているネットワークの中でネガティブな口コミを行います。企業は苦情の申し立てを厄介に感じるかもしれません。しかし、不満を感じた人がわざわざ声に出して教ええてくれるということはこきゃくにとっても勇気のいることです。クレーマーと捉えて片付けずに真摯に受け止めて対応することが必要です。 人は意外にも不幸な経験や自分が嫌な思いをした経験を他人に話したがるのです。このことはマーケターや経営者はよく理解しておく必要があります。